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秘めた恋をしている私は……

 

 

 


帰宅すると、家の中は既に電気が消えていた。

 

『今日は会社の人と飲んで遅くなるから』

そう言ってあったから、主人は夕飯もどこかで済ませて今は寝室で寝ているのだろうと思う。

キッチンに立ち寄って、水を一杯飲んだ。

 

主人に不満はない。

 

真面目な人だし
私のこともそれなりに大切にしてくれているし
こうやって遅くなっても、連絡さえ入れておけば問題なく受け入れてくれる。


私を気遣って保温状態のまま置かれているお風呂に入って

寝室に入ると、気持ちよく寝ている主人の寝顔。
いびきと寝息の中間の様な一定したリズムの音が聞こえる。

 

主人に不満はない

 

 

 

 

けれど、トキメキもない

 

 

 


主人の寝顔の隣で、スマホを取り出して、SNSのメッセンジャーを開いた。
今日一緒に時間を過ごした少し年上の会社の先輩にメッセージを送る。

『今日はありがとうございます。次の打ち合わせはいつぐらいを想定されていますか?』

奥さんに見られても怪しまれないように、仕事のような表現のメッセージを送る。
送ってから、メッセージのやりとりの履歴を消した。


既婚者の彼との関係がはじまったのは二ヶ月ほど前。


お互いに、言葉もなくはじまってしまった関係……


まだ、「好き」と言われたことはない。

「好きだ」と言われたことが無いから、私も言わないでいる。

 

主人の一定したリズムの寝息を聞きながら、私はスマートフォンを充電器に刺した。

ベッドに滑り込む前に、もう一度主人を見た。

 

 


一度寝たらなかなか起きない人。
大切な家族の顔

 


けれど、

 

 

 

トキメキはない

 

 

 

ベッドに潜り込んで思い出すのは、彼のことばかり
彼の表情。
彼の感触。


彼は、こんな関係になった私の事をどんな風に思っているんだろう

 


でも……

隣を見ると、何も知らずに一定のリズムを刻んで音をたてている主人の顔がある。


悪いな、と
思わないわけでもない。

 

私……私……

 

なんだか重い気分になってきたら

 


会いにきてください

 

 


一緒に考えていきましょう!